Astrid Sonne
デンマークのバルト海に浮かぶボーンホルム島で生まれ育ったAstrid Sonneは現在はロンドンを拠点に活動する作曲家であり実験的ヴィオラ奏者。2018年のデビュー以降、エレクトロニックとアコースティックな楽器の試みを通じて、これまで残した作品の中では多様なムードを丁寧に作り上げてきた。
*Astrid Sonne – Human Lines (1st Album / 2018)
*Astrid Sonne – outside of your lifetime (2nd Album / 2021)
彼女のこれまでのアルバムは主にインストゥルメンタルで構成されていたが、2024年1月にデンマークのインディペンデント・シーンを代表する名門Eschoからリリースされた3rdアルバム『Great Doubt』は、演奏技術がさらに洗練され、自身のヴォーカルが前面に出ているのが特徴的な幽玄なアート・ポップ/モダン・クラシカル、そして2024年度の傑作のひとつ。
*Astrid Sonne – Great Doubt (3rd Album)
各楽曲のトーンは間違いなく独自のものであり、狂いのないタイミング感を基にしたコントラストを中心に構成されている。歌詞は控えめで、特定のシーンや感情的な状態を強調するのみで音楽がその空白を埋める役割を担っている。しかし、歌詞はまた、抽象的なパターンを形成しており、そのタイトル『Great Doubt』を通じて「何を、どう尋ねるか」を見つめながら、答えを求めている様子が描かれている。それは世界に対する問いかけでもあり、愛に関する問いでもある。
*Astrid Sonneの生い立ちから作風に関するインタビュー
Astrid Sonneの相棒である弦楽器、ヴィオラはこのアルバム全体で自然に登場し、音の宇宙に完全に溶け込んでいる。感動的なトラック「Almost」ではピチカートのアレンジが印象的で、「Give my all」ではMariah Careyの1997年のバラードを引用した映画的な音の変調がクールに響く。一方、弦楽器は木管楽器よりも控えめになりつつも、弓を使った動きとデジタルな音響や空気感のあるフルートがバランスを取っている。そして、ビートやデチューンされたピアノが新たな音の風景を作り出し、彼女の音楽が常に新しい領域へと進化していることを確固たるかたちで示している。
*3rd Album『Great Doubt』から「Staying here」のMV