食品まつり a.k.a foodman

名古屋拠点の電子音楽家・食品まつり a.k.a foodman。2012年にアメリカ・オハイオの実験音楽レーベル〈Orange Milk〉からリリースしたアルバム『Shokuhin』でデビューを果たす。〈Orange Milk〉はヴェイパーウェイヴ、フットワーク、ノイズ、アンビエントなどを越境的に扱うDIY美学の強いレーベルであり、食品まつりの唯一無二な音楽性とヴィジュアル性をいち早く評価。以後、彼は国際的に注目される存在となっていく。
*Foodman – Shokuhin (Orange Milk / 2012)
その後のDiploによるレーベル〈Mad Decent〉からのリリースでは、グローバル・ベースやムーンバートンなどワールドミュージックと実験性の接点を探る一方、カセットテープレーベル〈Palto Flats〉からは日本のニューエイジや実験音楽とも通じるアンビエント〜電子音楽作品を発表。同レーベルは細野晴臣や坂本龍一のリイシューも手がけており、東アジア的な感性への深い理解と共鳴があった。
*食品まつり a.k.a foodman – Ikidomari (Palto Flats / 2015)
ライブ活動も国際的に広がり、これまでにポーランドのアヴァンギャルド系フェスティバルUnsoundやBoiler Room、LAの伝説的ビートカルチャーの発信地Low End Theoryなどに出演。自身の作品と共に、日本語ヴォーカルやトラディショナルなメロディを変則リズムに落とし込んだ彼の作風がジャパニーズ・フットワークとして各地で高い評価を得ることとなる。
*食品まつり a.k.a foodman Boiler Room New York Live Set (2017)
2021年には、Kode9主宰のUK拠点レーベル〈Hyperdub〉よりアルバム『Yasuragi Land』をリリース。フットワークとミニマル、ニューエイジの狭間で生まれたようなこの作品は、Pitchforkの「The Best Electronic Music of 2021」に選出され、Music Magazine、ele-kingをはじめ国内外の音楽メディアの年間ベストにも名を連ねた。Pitchforkからは「ジャパニーズ・アンビエント・フットワークの最前線」と称され、国際的な評価を決定づけた。なお、他にPitchforkに取り上げられた日本人アーティストは、坂本龍一、細野晴臣、Cornelius(小山田圭吾)、蓮沼執太、青葉市子といった面々で、foodmanがこのリストに並ぶというのは、世界基準の電子音楽家と認められた証しともいえるだろう。
2023年にも〈Hyperdub〉からEP『Uchigawa Tankentai』を発表。自らのルーツである沖縄的イメージや生活感を持ち込み、ミクロな音像とコミカルな要素が混ざり合ったサウンドは、Hyperdubの文脈でありながらも極めて個人的な世界を描き出している。
*foodman – Yasuragi Land (2021 / Hyperdub)
2025年6月には、NYツアーを実施。また、KOM_I(元・水曜日のカンパネラ)との共作EP『FANI MANI』をリリース。レーベルはKyoton。インド音楽、ジャパニーズ・フォーク、子ども向けのポップさなど多様な要素がfoodmanのビートに絡まり、KOM_Iの自由で奔放なボーカルが乗ることで独創的の高いトラックが生まれている。本作はBandcampのMonthly Spotlightにも選出され、The Japan Timesでは「Kom_I and Foodman’s beautiful mess」と評されるなど、話題を集めた。
*KOM_I & 食品まつりa.k.a foodman – FANI MANI
また、彼はロンドンのNTS Radioでレジデントも務めており、自身のルーツや趣向を反映した選曲と実験的なミックスで、世界中の音楽リスナーに向けてユニークな空間を届けている。
ユニット活動も盛んで、Bo NingenのTaigen KawabeとのKISEKI、ノイズアーティスト中原昌也との食中毒センター、ナカコー(元SUPERCAR)やドラマー沼澤尚とのセッションなど、ジャンルを問わず様々なアーティストと共演。常にジャンルの境界を曖昧にしながら、新たな音を探求している。
日本の生活感と国際的なダンスミュージックからアートの文脈を絶妙にミックスさせたその音楽は、「ベッドルームとダンスフロアの架け橋」とも称されている。ワールドワイドに活躍する食品まつり a.k.a foodman、7/26(土)開催のNOMADSŪQでは金沢初のライヴパフォーマンスを披露する。