Lipelis

ロシア・モスクワ出身のDJ / プロデューサー、レオニード・リペリスことLipelisは、長年にわたりアンダーグラウンドシーンの中で独自の存在感を示してきた。90年代、地元でDJをしていた兄の影響でアシッド、ジャングル、ブレイクビート・ハードコア、トランス、ガバといった多様な音楽に早くから触れたことが、彼の原点となっている。家庭にはPropellerhead Rebirthがインストールされたコンピューターがあり、808や909、303をシミュレートしながら幼少の頃から電子音楽制作に親しんだ。さらに父が所有していた渡辺貞夫のアルバムや、旧ソ連時代に流通していたスペースディスコ、キューバンファンクなども耳にしており、そうした家庭環境と音楽体験が後に自身の創作を形成したと語っている。
彼の名前が広く知られるきっかけとなったのは2015年、NYのレーベルL.I.E.S.が展開する限定エディットシリーズに参加した「LIPELIS EDITS」だった。独特のネタ使いと独特な雰囲気を纏ったエディットはシーンの中で強い存在感を放ち、今も高額で取引されている1枚に。
*Lipelis – Weirdshit Xu Paelk (2015 / L.I.E.S. Records)
以降、ドイツのPublic PossessionやオーストラリアのAnimals Dancingといった国際的なレーベルから作品を発表。2018年の「I Only Did These For Myself, But Now It’s For Everyone」はアフリカンリズムや子供のコーラスを織り交ぜた遊び心あるキラーチューン。この作品はダンスフロアでの根強い指示を得たとともに、Lipelisの自由で鮮やかな音楽性を強く印象付けた。
*Lipelis – Children Song (2018 / Animals Dancing)
2019年にはドイツ・ミュンヘンの名門、Public Possessionから『Bordeaux Lovin EP』をリリース。鮮やかなサウンドとバレアリックな感覚を兼ね備え、各地のDJに支持される一枚となった。こうした活動の一方で、彼はBeard In DustやTMOといった別名義でも数多くの作品を手がけてきた。Beard In Dustではエディットやリエディットを中心に、既存の音源を独特のセンスで再構築し、DJセットにおける武器ともなるトラックを数多く発表。TMOではよりマシナリーかつ実験的な作風を展開し、Lipelisのもう一つの側面を提示している。
*TMO – Jam IV (2015 / Public Possession)
*TMO + Andy Butler – Pepsi Cola Jam (2017 / L.I.E.S. Records)
*Beard In Dust – Coconut Paradise (2022 / Crudo Ricordi)
2022年にSystem 108からリリースされた『Function As A Meaning EP』はプロト・ハウス的なフレーズとTMOらしい硬質なサウンドが交差する作品で、アナログ化された際にはシーンから高い評価を得た。
*Lipelis x TMO – Function As A Meaning EP
2023年にはブラジルのアーティストCarrot Greenと組み、『Leo & Caito EP』を発表。バレアリックやダウンテンポを横断する豊かなトラック群は、サンパウロのGop Tun Festivalでも大きな反響を呼んだ。翌2024年にはArseniiとの共作「Be Honest」をEmotional Especialからリリース。80年代NYの空気を思わせるベッドルームディスコを基調に、ダブやジャングルリミックスまで収録した多彩な構成で、プロデューサーとしての幅広さを示した。
*Lipelis & Arsenii pres. Normal Position – Be Honest
Lipelisはプロデューサーとしてだけでなく、DJとしても国際的な評価を確立している。DekmantelやLente Kabinetといったヨーロッパの大型フェスティバルに出演し、ブラジルやオーストラリアなど世界各地でプレイしてきた。そのDJセットは、リリース作品同様にテンポやジャンルの垣根を越えたダイナミックな展開が特徴で、独特のタッチを持ちながらも常に新鮮な驚きをもたらすものとなっている。
*Lipelis | Listen! x Boiler Room
国際的なアーティストとのコラボレーションも積極的に行ってきた彼の制作の根幹にあるのは、機材やサンプルといった音そのものからのインスピレーション。気になるループやワンショットの質感からコードやムードを膨らませて楽曲に仕上げていく手法は、ハードウェアに親しんできた彼ならではのもの。日本国内のアーティストからも多くの影響を強く受けたように、多様な文化的接点が彼の作品に帯びる独特のカラーを支えている。
Interview – Lipelis Interview
*今回の来日に際するインタビュー
Lipelis、Beard In Dust、TMO、DJ Hedoni$tといった複数の顔を持ちながら活動する彼のキャリアは、アンダーグラウンドとメインストリーム、アナログとデジタルの間を自由に行き来しながら、世界中のダンスフロアとリスナーを魅了し続けている。
*Popstel presents Stay Local // Lipelis
8/29(金)からスタートする今回のLipelisのジャパンツアー、最終日が金沢公演となる。
Lipelis Japan Tour 2025
8/29 FRI – Bar inc (Osaka)
8/30 SAT – MIDNIGHT EAST (Tokyo)
9/5 FRI – OPPA-LA (Enoshima)
9/6 SAT – ESŐ (Kanazawa)
