MOODMAN

MOODMANは、1980年代末から現在まで35年以上にわたり、日本のアンダーグラウンド・ミュージックシーンを支え続けるリアル・ヴァイナル・ディガー。週末ごとにレコードバッグを携え、ムードとムードのあいだに潜む「音の気配」を繊細に紡いでいくその姿は、まさに音の職人。だが彼のプレイには、常に遊び心が宿る。
*MOODMAN Live Mix@HOUSE OF LIQUID, 1/9/2015
東京生まれのMOODMANは、ダブ、パンク、テクノ、ハウス、マイアミ・ベースなどジャンルを越境する嗜好を持つ。その幅広さは、幼少期に親しんだ“ムード音楽”の影響かもしれない。10万枚を超えるレコードコレクションが、彼の音楽への深い愛情と信頼を物語っている。
90年代初頭、自身のレーベルDub Restaurant Communicationを立ち上げ、主に欧米に向けて日本のインテリジェントテクノ(IDM)を紹介。その後、90年代を通じて、アメリカ西海岸から北欧まで、世界各地のアンダーグラウンドシーンとコネクションを続け、ディスコ・ダブやテック・ハウス黎明期の現場および音源を日本のシーンに注入。クラブシーンの最前線とDIY精神が交差する場所で、常に音楽の「未来のかけら」を探し続けてきた。
*Tar-Tar – Call For An Encore (Dub Restaurant Communication / 1994)
高橋透や宇川直宏(DOMMUNE)とともに手がけたパーティーGODFATHER、数多くのフェスでのレジデント、ライブストリーミングプラットフォームDOMMUNEの初回放送でのDJ、そして不定期配信されていたレギュラー番組、MOODOMMUNE。彼のセットは毎回テーマを持ち、集まった人々がその時間を共有し、記憶に刻むことを目指す。ときに引き算、ときに反復、ときに驚き。音の空間に彼のパーソナルな哲学が色濃く宿っている。
*This Is Your Time! Vol.39! – Moodman & Collectivo Miramar
2023年にはRicardo Villalobosの招聘を受け、ベルリンの伝説的パーティー、New Kids On Acidに出演。2024年末には、こちらもベルリンの名門クラブWATERGATEのクロージングパーティにも抜擢された。世界のクラブカルチャーが、MOODMANの繊細な空気感に注目している。
かつてはレコードバイヤーや音楽ライターとしても活動し、2024年には神保町にあるディープリスニングスペース、肆(YON)の音響設計を手がけた。趣味はボードゲームやポストカード、釣り。音楽と遊びを軽やかに往来し、カルチャーを遊びとして更新し続ける存在。
MOODMANがかけるのはただの音楽ではない。そこに流れる空気、顔を合わせた人同士の距離感、レコードのざらつき、過去と未来の記憶。それらすべてを束ねるのが“ムード”である。音楽の原体験を更新し続ける彼の存在は、音がかかる場所の意味や、音と人との関係性を何度でも問い直させてくれる。
*Moodman | HÖR – May 10 / 2024
そしてこの夏、MOODMANはおそらくソロとしては初の金沢でのプレイが実現した。GODFATHERでは2008年のEIGHT HALLでの出演以来、実に17年ぶり。
*2008年のGODFATHER金沢公演のフライヤー
タフに踊り続ける大人たちのための夜。DJが紡ぐ音の流れは、予測できないからこそ、その瞬間だけの体験となる。現実を忘れ、気ままに遊ぶ人々とともに、音の奇跡が生まれる場所、whimsic。MOODMANのプレイが、あなたの中の“何か”をふと揺らす夜。