Sumo Jungle aka Soichi Terada
寺田創一、1965年3月19日、東京生まれ。最初に親しんだ楽器は電子オルガンだった。のちに電気通信大学で計算機科学を専攻し、在学中からキーボーディストやマニピュレーターとして活動を開始。さまざまな音をサンプリングしながら独自の音楽を制作していた経験は、その後創作活動の原点となっている。
1980年代後半になると、リミックスや編曲の仕事をきっかけに本格的な作曲活動を始める。1989年には作編曲家、リミキサーとして日本のレコードメーカーの作品を数多く手がけると同時に、サンプリングを駆使した作品を発表するため自身のレーベル
同年には島田奈美のために制作した「Sun Shower」を発表。Paradise Garageにおける伝説的DJとして知られるLarry Levanの支持も得たこの楽曲は、豊かなメロディと心を揺さぶるアレンジによって、現在も世界中のDJやダンサーに愛され続けている。
*Nami Shimada – Sun Shower
寺田創一のサウンドには1980〜90年代のニューヨーク・ハウスの影響がさりげなく息づいている。しかし単なる模倣ではなく、親しみやすさと繊細な感情表現を兼ね備えた独自のハウスミュージックを追求し続けたことで、日本のハウスミュージック・シーンにおいて唯一無二の存在感を確立していった。陽気で親しみやすい楽曲から、ムーディーでソウルフルな作品まで、その表現の幅広さとユーモアに富んだ音楽性は現在まで一貫している。
*Soichi Terada & Shinichiro Yokota – Tokyo XXX (1991 / BPM)
*Soichi Terada – Do It Again (1995 / Far East Recording)
1990年代後半には、後に大きな注目を集めることになるジャングル・プロジェクト「Sumo Jungle(相撲ジャングル)」をスタート。初期ドラムンベースやレイヴカルチャーの熱気を独自の感性で解釈し、大相撲を席巻していたハワイ勢を称える某ソングをサンプリングするなど、荒々しいブレイクビーツにジャジーなコードや柔らかなメロディを重ねるスタイルは当時から異彩を放っていた。Sumo Jungleプロジェクト以外でも、本人名義で数々のハードコア路線の作品も発表しており、北島三郎の「終着駅は始発駅」の高速ブレイクビーツカバーや時の逃走犯のボイスサンプルを用いた「殺人の時効は15年」などは現代でもその音の色褪せなさと、ネタの目の付け所の特異点、そしてユニークとアナーキーの表裏一体性が際立っている。
*Soichi Terada – Sumo Jungle GRANDEUR (1996 / Far East Recording)
*Soichi Terada – Acid Face (1998 / Far East Recording)
同時期から活動領域はさらに広がり、ドラマやゲーム作品のサウンドトラック制作を数多く手がけるようになる。映像作品に向けた作曲を重ねるなかで、音楽と映像の関係性を探求し、自身の作品においても映像的なアプローチを強く意識するようになった。
その代表例のひとつが、Sumo Jungleがきっかけとなり制作を手がけることとなったプレイステーション用ゲーム『サルゲッチュ』シリーズの音楽である。彼が手がけた『サルゲッチュ』および『サルゲッチュ3』のサウンドトラックは、ゲーム音楽の枠を超えた独創的な電子音楽作品として高く評価され、現在も世代や国境を越えて多くのファンを魅了し続けている。
サルゲッチュの楽曲制作について、以下のように反芻している。
曲のテンポはあまり考えずに普通に作っておいてから、それを160bpm以上のテンポに上げるとバカっぽいというかサルっぽくなることに途中から気づいたので、そういう方法をよく試しました。40曲以上の採用オーケーをもらうためにNG分も含め約半年で50曲位の曲を作る必要があって大変でしたね。
全ての曲にサル魂を込めて作ったので、お気に入りの順位はつけられなくて、全ての曲が気に入っています。このサウンドトラック制作中には自分はサルの気持ちになって、サルの基準で行動していましたのでボツ曲も含めて作った曲全てが可愛い子ザル達なんです。
*Soichi Terada – Ape Escape Originape Soundtracks (2011 / Far East Recording)
2000年代に入るとプロジェクト「Omodaka」を本格化。近年では楽曲や歌詞も自身で手がけている。2009年からは液晶モニター、携帯ゲーム機、巫女装束を組み合わせた独自のライブパフォーマンスを開始し、日本のみならずアメリカやヨーロッパ各地で公演を行ってきた。また、多くの映像作家とのコラボレーションによるミュージックビデオ作品も発表し続けている。
長年にわたりFar East Recordingsから作品を発表し続けてきた寺田創一は、横田信一郎とともに日本独自のハウスミュージックを育み続けてきた。その功績は後年になって海外でも再評価されることとなる。Huneeがキュレーションしたコンピレーション『Sounds From The Far East』が、AntalによるRush Hour からリリースされたことをきっかけに、その親しみやすく無垢でありながらも感情に深く訴えかけるサウンドは欧米のリスナーにも広く知られるようになった。以降はフルライブセットによる海外公演も精力的に行い、日本を代表する電子音楽家の一人として世界的な支持を集めている。

そして2025年から2026年にかけて、『サルゲッチュ』および『サルゲッチュ3』のサウンドトラックがそれぞれ4枚組レコードボックスセットとしてリリースされたことを契機に、90年代後半から温め続けてきたジャングル・プロジェクト「Sumo Jungle」と、『サルゲッチュ』シリーズの楽曲群を融合させた新たなライブセットが誕生した。

「相撲+サルゲッチュセット」では、初期ドラムンベースからレイヴに至るジャングルのエネルギーと、『サルゲッチュ』シリーズが持つ独創的なメロディセンスがひとつのライブ体験として昇華されている。アナログ機材の質感とモダンなプロダクションを掛け合わせながら、クラシックなジャングルの魂を現代のフロアへと接続するそのサウンドは、単なるノスタルジーには留まらない。ハウスミュージック、ゲーム音楽、映像表現、そしてジャングルという長いキャリアのすべてが凝縮された、2020年代ならではのフレッシュなジャングル体験となっている。
6月27日(土)開催のMXOSTYLEでは、2018年にManierへハウスセットで出演して以来となる金沢公演となる。
*Soichi Terada at Manier 2018


